リーガルテック®展2014
日本の歩むべき道とリーガルテック®
知財立国を実現させる新世代の担い手たちへ
リーガルテック®と国際訴訟支援
日本の「知財化の流れ」
日本は、かなり、特許で稼いでいますが、アメリカとの差が大きいというのも実態です。どうすれば知財の先進国のアメリカに追いついていけるのか、そのためには、知財の権利侵害や知財窃盗が行われた場合にリーガルテック®を駆使して、証拠データを抽出し、訴訟を起こしてでも奪われた知財を取り返すという姿勢を示すことが必要です。実際に米国では、様々な権利侵害に対して訴訟が起こされ、巨額の賠償金が支払われています。日本が知財でもっと、稼ぐためには、アメリカの進んだリーガルテクノロジーをいかにキャッチアップしていくかが課題となります。
「法の支配」を下支えするリーガルテック®
リーガルテック®とは、いったいどういうものなのでしょうか。PCや携帯電話などのデータを解析し、証拠となるものを取り出すフォレンジック技術、また、企業の持つ大量の電子データを証拠として収集し、裁判で使える形で開示するeディスカバリ技術、最近はオンラインで常にバックアップを取り、データ蓄積を一元化し、同時に整理しておくことでeディスカバリやフォレンジックに対応できる、すなわち、社内データの入口から出口までのデータを一貫して把握する予防法務的な体制づくりに進化しています。蓄積された膨大なメールのアーカイブデータから必要なデータを抽出し、高速で検索可能なインデックスデータを作成しながらデータを移行するサービスや、メールのデータ送信を証明する「i証明サービス」などに広がりを見せています。
リーガルテック®が活用される典型的な場面の一つは国際訴訟です。新日鐵の技術流出事件を例に見てみましょう。新日鐵(現在は新日鐵住金)が開発し、その技術力の高さから他の追随を許さぬ看板商品で製法が企業秘密だった「方向性電磁鋼板」の技術が韓国最大の製鉄会社ポスコに流出し、さらにそれが中国企業に売られたという事件がありました。
2012年、新日鐵は秘密を漏洩した元社員とポスコを相手取り、一千億円の損害訴訟を起こしました。このような場合、情報の不正流出を証明するため入手した元社員のPCの調査が行われます。不正流出の証拠データが消されていた場合にデータを復旧できれば、不正流出の立証が可能となります。ですが、それだけでは留まりません。膨大な量のデータを復旧させて不正の痕跡を見つけ出したとしても、当該データを生のまま証拠として提出すると、そこから保守すべき機密情報を取り出される恐れがあります。そこで、私たちは、立証・開示のための情報を仕分けすると同時に、機密情報を漏らさぬために最新の注意を払って証拠データの抽出作業を行います。
こういった証拠調査を行う場合は、企業のPCなどに収められているハードディスクをそのまま調べるのではなく、原本と同じ内容であることを証明できる特殊な方法でコピーを取り、保全手続きを行った媒体に対して調査を行います。実際の証拠データ復旧調査は、弊社と捜査機関が協力して改良を重ねた「ファイナルフォレンジック」というツールで解析します。メールや削除されたインターネットの閲覧履歴、USBメモリの接続履歴などが対象となりますが、ハードディスクが壊れて動作しない場合もあり、その場合は、クリーンルームで分解した上でデータを取り出すこともあります。
捜査機関と連携した携帯電話のデータ復旧
「振り込め詐欺」に使われた携帯電話が、大量に警察から持ち込まれることもありません。犯行グループには、「まずくなったら通話やメールの履歴をすべて削除しろ」というマニュアルまで用意されているケースもあり、削除したはずのデータを復旧させることができれば、重要証拠を取り出すことができます。
LINEの普及が捜査を変えた
さらに、近年のLINEなどのチャットツールの普及で、捜査現場における証拠収集のあり方が大きく変わってきました。チャットツールが普及する前は、通話履歴を見ても会話の内容までは残されていない状態でしたが、チャットツールの場合は、やり取りの内容がテキストデータで残されているので、スマホ・携帯電話の証拠性が桁違いに上がっています。現在の捜査現場では、チャットの内容が抽出できるかどうかが立件のための極めて重要な要素になっています。逆にチャットの履歴を見れば、その人がどういう人物で誰とどういうやり取りをしているのかを正確に把握することができます。この大量のデータをビックデータ解析技術で解析すれば、その人の行動パターンや犯罪傾向などの分析も可能です。
電子ディスカバリ時代に不可欠なリーガルテック®
世界中で訴訟合戦が繰り広げられたアップル対サムスンのスマートフォンをめぐる知財訴訟では、カリフォルニア州連邦地裁大陪審が12年8月、サムスンがアップルの特許を侵害したとして、10億5千万ドルあまりの巨額の損害賠償を認定しました。陪審員の評決に大きな影響を与えたのは、ディスカバリ(証拠開示)で示された膨大なデータの中に含まれていた一通のメールでした。グーグル幹部からサムスンに対して、「アップルに似せたデザインにならないように」という注意喚起が行われていたことが分かったのです。つまり、サムスンはアップル社の特許権や意匠を侵害しているという認識を持っていたことが証明されたというわけです。
この訴訟のドキュメント量は、証拠開示の対象として3億5200万ファイル、検索回数6千万回、25の法律事務所が対応して、75件の訴訟が提起され、2千回の報告が行われたという、空前の規模になりました。このように、米国の民事訴訟には、ディスカバリと呼ばれる証拠開示手続きがあります。これは訴訟の両当事者が相手方に対して証拠開示をも求めるもので、非常に広範囲にわたります。近年、企業活動で作られる文書のほとんどは電子データであり、これらの開示を特に「eディスカバリ」と呼んでいます。開示請求がなされたら、限られた期間のうちに社内の膨大なデータの中から目指すデータを見つけ出すことができない、あるいは意図的に隠していたことが発覚すると高額な罰金が課せられ、フェアネスを害したとして不利な判決が裁判官から示唆され、不本意な条件で和解せざるを得なくなったという事例がたくさんあります。
日本企業も、この流れに無縁ではいられません。米国で日本企業が訴訟に巻き込まれた場合には、eディスカバリが求められています。その対策として、リーガルテック®の利用はもはや不可避です。
グローバル時代に必要とされるリーガルテック®
少子高齢化が急速に進んでいる我が国は、観光、金融、IT立国、そして、知財立国の実現化が急務なのは誰に目にも明らかです。技術ノウハウを蓄えて世界中からロイヤリティを得る知財立国が日本の向かうべき未来図だと思いますが、知財をお金に変えるためには、国際訴訟を起こしてでも、知的財産を守る、ロイヤリティを得るというプロセスが不可避となっています。国際訴訟で勝利をするためには、高度なリーガルテクノロジーを駆使して戦う能力を身につけることが必要となります。
(リーガルテック®は、AOSテクノロジーズ株式会社の登録商標です)