知財訴訟
知財訴訟eディスカバリ(電子証拠開示)レビューサービスとは、特許、商標、著作権などの知的財産権に関する訴訟で必要となる電子証拠の収集、整理、分析を行う専門サービスです。
知的財産訴訟では、多くの場合、技術情報や契約関連書類、通信記録などの電子データが証拠として求められます。eディスカバリレビューサービスでは、以下のプロセスが含まれます。
・証拠データの識別と収集:関連する電子データを特定し、安全かつ効率的に収集します。
・処理:収集したデータを整理し、重複データの削除やデータ形式の変換を行います。
・分析:収集したデータの中から、関連性の高い情報や証拠となるデータを見つけ出します。
・レビュー:専門家が関連性のあるデータを詳細に検討し、訴訟で使用する証拠を選定します。
・証拠提出:選定された証拠を相手方や裁判所に提出し、訴訟の進行に使用します。
知的財産訴訟eディスカバリレビューサービスは、専門的な知識や技術を持つベンダーや弁護士が提供し、訴訟において重要な役割を果たします。このサービスを利用することで、企業は訴訟にかかる時間やコストを削減し、より効果的な証拠収集が可能になります。
知財訴訟のeディスカバリ(電子証拠開示)レビューサービスの需要が高まっている背景には、以下のような要因が考えられます。
グローバル化の進展:
国際的なビジネス展開が進む中、企業間の知的財産権に関する紛争が増えています。特に、技術革新が進む分野では、特許や商標、著作権の権利侵害が起こりやすく、訴訟が増えています。
電子データの増加:
デジタル化が進む現代では、企業が取り扱う電子データの量が急速に増加しており、訴訟に関連する証拠が電子データとして存在することが一般的になっています。このため、電子証拠の収集・分析を行うeディスカバリレビューサービスの需要が高まっています。
法規制の強化:
知的財産権の保護を目的とした法規制が世界的に強化されており、企業はこれらの法規制に対応するためにeディスカバリレビューサービスを利用することが増えています。
証拠開示の重要性:
知的財産訴訟では、証拠が非常に重要な役割を果たします。適切な証拠を提出することで、企業は自社の権利を確実に守ることができます。このため、効率的で正確なeディスカバリレビューサービスが求められています。
AI技術の発展:
AI技術の進化により、大量の電子データの分析が効率的かつ高精度に行えるようになりました。これにより、eディスカバリレビューサービスがより効果的に提供されるようになり、需要が高まっています。
これらの要因により、知財訴訟のeディスカバリ(電子証拠開示)レビューサービスの需要が高まっています。これに対応して、専門的な知識と技術を持つベンダーやサービスが増えてきています。
弊社では、これまでは人間のためのデータのリスクを管理してきました。しかし、これからはAIのためには必ず学習用データが必要で、このAIのためのデータのリスク管理、保存管理、データを総合的に集めて管理することがキーになります。AIのためのAIデータのリスク管理に注力をし、AIデータを活用した、AIデータドリブン事業の支援をして参ります。
以下は、知財訴訟でeディスカバリが重要な役割を果たした事例です。
2017年に始まったGoogleの自動運転技術部門であるWaymoとUberの間の訴訟は、自動運転技術に関する機密情報の盗用を巡るものでした。Waymoは、Uberが自社の元従業員を通じて機密情報を盗用し、自動運転技術の開発に利用していると主張しました。この訴訟では、eディスカバリが大量の電子メールやドキュメント、ソースコードなどのデータから証拠を収集するために使用されました。最終的には、両社は和解に至り、UberはWaymoに対して賠償を支払うことになりました。
2011年4月、アップルがサムスン電子のギャラクシーシリーズがアップルの特許を侵害しているとして、カリフォルニアの連邦地裁に提訴したことからアップルとサムスン電子の知財訴訟は始まりました。一方のサムスン電子もアップルが無線通信技術などの特許を許可なく使用したとして、韓国、日本、ドイツでアップルを逆提訴し、その後、係争は、ヨーロッパにも広がっていきました。
2011年11月、欧州委員会は、サムスン電子が侵害を訴えていた通信技術は、FRAND特許として技術の普及のために幅広く提供すべき標準特許であるとし、サムスン電子がアップルにFRAND特許を利用させないのは、EUの独占禁止法に違反するとしました。
2014年3月、米地裁は、サムスン電子に9億3000万ドルの賠償を命じる判決を下しました。5月には、サムスン電子に1億1,960万ドル、アップルに15万8,400ドルの損害賠償支払いを命じました。
この知財訴訟は、世界10カ国で50件以上の訴訟が繰り広げられました。
米国での訴訟は、電子情報証拠開示、eディスカバリーの対象となります。eディスカバリーとは、米欧の民事訴訟や行政調査、審理の当事者に向けた電子情報証拠開示のための手続きルールです。米国では、2006年にFRCP(連邦民事訴訟規則)で厳密な運用が明文化され、このルールが守れない場合には、制裁金、および訴訟においてのペナルティが課せられるようになりました。訴訟や行政調査の当時者は、証拠開示の要求に答える義務を負います。アップル、サムスンの訴訟に関して、様々な証拠データが法廷に提出されたというニュースが流れていましたが、ここで開示されたデータがeディスカバリーにより開示が義務付けられたデータを含んでいます。
アップルとサムスンの訴訟では、証拠データの保全義務違反というのも指摘されました。サムスンは、全てのeメールが2週間後に自動削除されるシステムを導入していましたが、アップルは、侵害通知をサムソンに行った2010年8月時点で削除を停止して、証拠保全を行なわなかったのは、証拠隠滅を図ったもので、証拠保全義務違反に当たるとして、制裁を求めました。これに対して、裁判所も一度は、この訴えを認めましたが、これ対して、サムスンは、アップルも証拠保全義務を果たしていないと主張し、裁判所もアップルが自社に不利な証拠を破棄した可能性があると認めて、双方の主張が無効となりました。
陪審員が10億ドル余りの巨額の損害を認定するときに判断材料としたのがグーグルからサムスンの幹部に送られていた電子メールだと報道されています。グーグルの幹部がサムスンに対して、アップルのiPhoneにあまりにも似ているのでデザインを変えた方がいいというメールが証拠として提示されて、このメールにより、サムスン側もギャラクシーがiPhoneに似ているということを認識していたという証拠となったとのことです。
このように電子データが評決に大きな影響を与えています。昔の訴訟ならば、段ボール箱を引っくり返して、証拠書類や郵便物を探しましたが、今の時代の訴訟では、ドキュメントファイルやメール、つまり、デジタルデータが重要な証拠となります。昔と今の大きな違いは何でしょうか?保存されているデジタルデータの量が膨大になったということです。この膨大な証拠データの中から、どのようにして、重要な証拠を見つければいいのかということが重要な課題となっています。実際に、膨大な証拠データの中のたった一通のメールが巨額の賠償金を左右してしまいます。
この事例では、ホスティングされた総ドキュメント数は、3億5千2百万ファイル、6千万回の検索が行われ、訴訟に関わった弁護士事務所は、25に上り、75件の訴訟に発展し、4億ページのレポートが作成され、2千回の報告が行われました。このような大量データをどのように検索して、どうやってこれだけの数の法律事務所に効率良く証拠を渡していくことができるでしょうか?これを調べるためにリーガルテックの技術が米国ではどんどん進化しています。
実際に電子データを証拠開示するためには、証拠データを関連のあるデータを関連のないデータに仕分けをする作業が行われます。関連のあるデータをレビューアーが見つけると関係のあるというというチェックを付けます。
同じように関連のないデータの場合には、関連ないというところにチェックを入れます。
こうやって、ある程度のデータの仕分け作業を行うと、ソフトウェアが自動的に関連するキーワードと関連しないキーワードの仕分けを行い、重要キーワードのランク付けを行います。
今度は、人間が行った仕分けルールをソフトウェアが解析して、自動的にデータの仕分けを行うことで、ドキュメントのレビュー時間を大幅に短縮することができます。ここでは、全体の16%のドキュメントのレビューを行うだけで、74%の関連のあるドキュメントの抽出を行い、65%の時間を削減しています。